関節リウマチ医学最新ニュース（５９）
サイトカインやケモカインの産生増加は関節リウマチの発症以前から起きている
関節リウマチは、突然発症する急性病ではなく、長期間かけて進行する慢性炎症疾患です。関節リウマチの原因あるいは発症過程を解明するためには、病気が発症してしまっている患者さんの研究だけでは不十分とえいます。
今回の論文（Arthritis Rheum. 2010; 62: 383-391.）は、スウェーデン北部のVästerbottenの住民でMedical Biobankに登録されたコホートを用いた研究であり、発症前の臨床データや血液サンプルが保存されていました。
登録者の中には、後に関節リウマチを発症した症例が86人（女性65人、男性21人）存在し、これらの患者さんに対してMedical Biobankの中から年齢、性、血液の提供された時期、居住地などを勘案して患者さん1に対し3の割合でコントロール群をおきました。患者さん群の登録は関節症状が出現する3.3年前(1－5.0年）で、関節症状が出現して診断がつくまでは7.7±3.6ヵ月でした。
測定キットを用いて30のTh1, Th2，Treg系のサイトカインやケモカインを同時に測定しました。また測定に対するリウマトイド因子の影響も検討しました。
抗CCP抗体やリウマトイド因子が発症前から陽性となることはすでに報告されていますが、この研究でも確認されています。測定されたサイトカインの中では、IL-1β，TNF-α，IL- 6，IL-2，IL-12，IFN-γ，IL-4，eotaxin，IL-10，IL-7などのいわゆるTh1，Th2，Tregに関連した炎症惹起性あるいは炎症抑制性サイトカインがコントロールに比べ高値を示しました。
また、MCP-1，MIP-1α，GM-CSF，G-CSFなどのケモカインも発現が亢進していていました。将来のRA発症予測因子としての感度は抗CCP抗体が最も高く、リウマトイド因子がこれに続きましたが、サイトカインとしてはeotaxinが最も高いという結果がでました。
また、抗CCP抗体陽性と関連が深かったものもTh2サイトカイン群でした。また、上昇していたサイ トカインは発症時期に近づくほど高値を示しましたが、最も興味深いことにIL-17は発症後に有意に低下しました。
発症後には間質細胞の活性化マーカーや血管増殖因子も高値となっていました。抗CCP抗体の存在はその後の関節リウマチ発症に対して高い感度と特異度を持っていましたが、これに今回測定したサイトカインやケモカイン等を加えると、感度特異度ともにさらに増加しました。
関節リウマチ発症前に、すでに多くのサイトカインやケモカインの活性化が明らかにされたことから、症状が軽い間にも全身の慢性炎症は進行していることを銘記しなければなりません。つまり、早期に治療を開始するほど良い結果が得られることは当然なのです。