関節リウマチ医学最新ニュース(57)
関節リウマチ(RA)と動脈硬化
関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの慢性炎症疾患は、動脈硬化が進展しやすいことが以前より指摘されています。
欧米では、関節リウマチ(RA)の心血管死が高率に認められています。動脈硬化が関節リウマチ(RA)患者さんの生命予後に関連する重要な因子とされています。
第54回日本リウマチ学会総会・学術集会で、日本の関節リウマチ(RA)患者さんも健常人に比べて、動脈壁の肥厚、硬化ともに進行していること。さらに、その傾向は炎症、骨代謝障害や内臓脂肪蓄積の程度が強い症例ほど顕著であることが報告されました。
骨粗鬆症は、加齢(特に閉経後の女性)、ステロイドの慢性服用が危険因子です。血管の動脈硬化が慢性炎症で起こることを考えるとステロイド投与が炎症を抑えるため、ステロイド骨粗鬆症の場合は、むしろ動脈硬化を抑える方向に働くと推測されます。しかし、今回の発表では骨粗鬆症は動脈硬化の危険因子という結果が出たようです。
また、内臓脂肪型肥満であれば、動脈硬化が進行することは理論的にも証明されている事柄です。関節リウマチ(RA)の動脈硬化の危険因子として内臓脂肪型肥満があがるのは当然でしょう。関節リウマチでなくても内臓脂肪肥満型は動脈硬化の独立した危険因子なのです。
さて、この結果から関節リウマチ(RA)の動脈硬化の進行を抑えるために骨濃度を高める医薬品が有効なのでしょうか?結論は保留としか言いようがありません。これは今後の臨床試験にゆだねられるでしょう。
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→今回、関節リウマチ(RA)患者さんの動脈硬化を2つの指標で評価した。動脈壁肥厚の指標である頸動脈の内膜中膜複合体肥厚度(IMT)と、血管壁硬化の指標である脈波伝播速度(PWV)。
糖尿病合併例を含む透析患者438例を対象とした前向きコホート研究により、IMTまたはPWVが大きい群で心血管イベントの頻度が有意に高いこと、IMT、PWVが心血管イベントの独立した 有意な予測因子になることが報告されています。
まず、関節リウマチ(RA)患者さんのIMTを測定し、年齢、性別、体格、喫煙、血圧値、血清脂質値に有意差のない健常群と比較したところ、RA群でIMTは有意に肥厚していた。多変量解析を行うと、年齢とともに、RA罹病期間、関節破壊の程度(Larsen's grade)、および骨密度低下の指標である踵骨の超音波骨評価値(OSI)が、IMT増大の独立した有意な危険因子であることが分かりました。
IMTの推移を1年間にわたって観察すると、関節リウマチ(RA)患者さんの群では健常群に比べ、IMTの増加が有意に大きかった。このIMT増加率は、炎症マーカー値や尿中カルシ ウム排泄量と有意な正の相関を示した。 PWVについてもIMTと同様、健常群に比べてRA群で有意に高値だった。PWV増大に寄与する因子について多変量解析を行うと、年齢、血圧とともに、橈骨骨密度の低下が独立した有意な危険因子になっていました。
さらに、関節リウマチ(RA)患者さんの内臓脂肪量を、躯幹部と四肢の脂肪の比率(躯幹脂肪比率) で評価したところ、BMIが同等の健常群に比べ、有意に高かった。PWV増大因子について多変量解析を行うと、骨密度とともに躯幹脂肪比率が有意に関連していました。