関節リウマチ医学最新ニュース（９１）
TNFα阻害薬と非生物学的製剤の重症感染症入院率に差はない
関節リウマチ（RA）など自己免疫疾患に対してTNFα阻害薬を代表として生物学的製剤の使用が増えています。そして、短期の副作用としての感染症や長期のガンなどの腫瘍の発生が報告されています。
今回、関節リウマチ（RA）など自己免疫疾患患者の腫瘍壊死因子（TNF）α阻害薬使用による入院を必要とする重症感染症の頻度は非生物学的製剤と差はないとするデータが発表されています（Grijalva CG, et al. JAMA 2011; 306: 2331-2339.）。
今回、多施設の連携で関節リウマチ（RA），炎症性腸疾患（IBD），乾癬および脊椎関節炎（乾癬・乾癬性関節炎・強直性関節炎）患者さんの1998?2007年のデータを後ろ向きに収集した。主要エンドポイントは，TNFα阻害薬または非生物学的製剤の使用開始から1年間の重症感染症による入院としています。
対象患者は関節リウマチ（RA）が1万484例，炎症性腸疾患（IBD）が2,323例，乾癬および脊椎関節炎が3,215例。重症感染症による入院は1,172例で，肺炎または皮膚，軟部組織の感染症が多い結果でした。解析の結果，TNFα阻害薬群と非生物学的製剤群の100人年当たりの重症感染症による入院率は関節リウマチ（RA）が8.16対 7.78，炎症性腸疾患（IBD）が10.91対9.60，乾癬および脊椎関節炎が5.41対5.37と，いずれも有意差はなかったという報告です。
関節リウマチ（RA）患者ではエタネルセプト，アダリムマブと比べ，インフリキシマブ（レミケード）使用患者で重症感染症による入院率が高い結果でした。そのほか，登録時のステロイド使用と感染症との間に用量依存的な関係が認められたといいます。
これは１年間に区切ったデータですので、関節リウマチ（RA）など自己免疫疾患に対してTNFα阻害薬を代表として生物学的製剤の使用が及ぼす長期的影響の報告を待ちたいところです。